最新のサンショウウオ図鑑
今年の春ごろに最新のサンショウウオの本が発売されました。名前は日本産サンショウオ図譜です。図鑑ではなく図譜ってところにこの本の最大の特徴があるかもしれません。
図鑑は「調べるための本」で、誰でも種名や特徴が分かるように、分布・生態・識別点を整理した実用書です。分かりやすさと検索性が重視されます。
図譜は「残すための本」で、形態や色彩、個体差をできるだけ正確に記録することが目的です。つまり、図鑑は 同定の道具、図譜は 記録資料。
近年増えた種類を一度ここでまとめて未来にも繋がるサンショウウオ本って訳です。
著者は松井正文、ハクバサンショウウオとホクリクサンショウウオを新種記載した京都大学の名誉教授。写真は関慎太郎、サンショウオ本ではおなじみの写真家の方。お二方とも多くの著書があります。
読んでみて

凄い所
- 日本のサンショウウオ全種のページがある
- 一種あたりのページ数が多い
- 写真が美しい、綺麗、数も多い
- 生息地の写真や場所、季節の情報もある
- 学名や発見についての情報が詳しい
- 新種として認められない理由などもある
- 本の大きさと紙質の良さ、情報の豊富さを考えると安い
- 写真を見るだけでも満足、文章だけ読んでも満足
- 種の細かい身体数値のデータがある
- 外せないマメ知識等もある
いまいちな所
- お腹側の写真が無い
- 比較に役立つ種の一覧写真などが無い
- あいうえおじゅんの種の検索が無い
家に届いて大きさと分厚さと写真の豊富さと綺麗さに「おおっつ」となりました。九州にも知らない種もいたし(対馬のタゴサンショウウオは知らなかった)、改めて日本のサンショウウオの数の多さを知りました。学名やタイプ産地、遺伝情報についての記載は図鑑にはそれほど詳しく書かれていませんが、局地的に生息するからこそタイプ産地や標本などが重視されるのでしょうね。著者はホクリクサンショウウオとハクバサンショウウオを記載した人物でもあるので、どのサンショウウオにつても種として認められた理由や経緯が記載されている点も重要です。
一方で、近年新種として発表されたのにこの本に載せられていない種もあるのですが、遺伝子検査の不備や標本が無く検証ができないこと、一部の大きさの違いのみを理由としていることなどを理由に批判されています。また、オワリサンショウウオとヒロシマサンショウウオは種として認められるか疑問を持ちつつも記載されています。
具体的に載ってない種
- ナガトサンショウウオ
- ミヤザキサンショウウオ
- Hynobius amabensis sp. nov.
- ニセヒバサンショウウオ
- メガメサンショウウオ
- ウシロヤマサンショウウオ
- サクホクサンショウウオ
- センザンサンショウウオ
- バンエツサンショウウオ
現時点でのレッドデータブックのカテゴリーや希少種かどうかは書かれていますが、飼育・採取禁止などは具体的に書かれていません。特定第一は捕獲も飼育も禁止、特定第二種は販売目的以外の捕獲と飼育は認められています。例えばブチサンショウウオは飼育は可能です。我が家で一匹飼ってます。第一種は捕獲も禁止です。
正誤表
正誤表が公開されています。
チクシブチがツクシブチと書かれているとか。

サンショウウオ好きにはマストアイテム
この本を買った直接のきっかけは来年、九州で見つけていないサンショウウオを探したかったから。具体的にはオオイタ・ソボ・オオスミ・ツシマ・タゴ。もちろん可能ならアマクサも。来年のサンショウウオ探しが楽しみになりました。



