琉球蟹探訪買った

作者のさとかつさんはX上の漫画で知った。あと図鑑のインタビューでも。こんなマンがあるだあぁと知って評価も高いようだから買ってみた。図鑑のインタビューでも語られていた通り、背景や生物の絵はゲッチョ先生っぽい。
同人誌などで発表された作品を一冊にした本がこれだ。書き下ろしも含まれている。特にてふてという作品はこの本で一番ページ数が多い。5作品が収められており、一応それぞれの話は独立している。
http://x.com/i/article/1949713136736743424— 小学館の図鑑NEO (@ZUKAN_NEO_PR) July 28, 2025
琉球蟹探訪

主人公のキリコが有給消化で2泊3日で沖縄に行ったら空港で2000円のカニツアーに参加することになった話。住処を開発で奪われた生き物たちが都会に進出しているという世界観。
ほんわか生き物漫画というふんいきだが干潟で遊んだ後、キリコは殴られて気を失う。
個人的には虐げられた生物たちが人間に大復讐するストーリー読んでみたいなぁ。このカニは優しすぎる。
※カニ像は満湖公園にある。作中では湖とだけ書かれている。

間隙紀行

研究者のキリコはミミズハゼ掘りに来たけど、流砂につかまり地下世界に落ちてしまう。
レトロな道具を集めているお化けイドミミズハゼが地下に住んでいて、「母さん」のところに連れて行ってもらうが、その母さんが異質。お化けイドミミズハゼの舌にも同じ三つ目がある。確かに地球外生命体っぽいよね。イドミミズって。
宇宙人が地球に来たらまず最初に学名が付けられるんだろうか。。。
干潟忘備録

干潟で寄生される漫画 1/4 pic.twitter.com/lw4k7RnA4s
— さとかつ@単行本発売中 (@satokatu031) May 17, 2024
卒論を書くためにサンプリングをしている頃のキリコ。シラヌイという寄生生物に血を吸わせる代わりに、生き物研究の手伝いをしてもらう。一緒に有明海にも来た。
最後は夢落ち。単純に読めば、寄生生物なんて「なーんだゆめか」なんだけど、シラヌイの最後のセリフからすると彼は地球外生命体(もしくは単純に海の生き物)かなにかで、最後の一刺しで記憶を消したっポイと思った。だが、冒頭の回想のセリフから忘れたわけでなく、こういうこともあったと思い出した話。
※タモは三谷漁具のシステムタモ。本の表紙にもシステムタモ。
テフテ

この作品は100ページ以上あり、この単行本のメインなのかもしれない。主人公キリコの謎に迫るような作品。
百年の眠りから覚めた軌道エレベーターが、生命を喪った地球と月を再び結ぶ。エネルギーは無限、しかし命は有限。人類は、かつて“いただきます”と言った時代をもう知らない。失われた自然を代替科学で埋めた人類からはみ出した人が過去の遺物を使って月へ向かうという壮大なテーマ。
SF要素満載で地球の環境が終わっている。ちょっと整理してみたい。
- 軌道エレベーターが日本から月の中継地点?まで伸びていた。
- 月面でキリコは研究をしていた
- 月面は観光地だったが今は行ったら帰って来れない
- 同僚がシードニウムというナノマシンを開発
- シードニウムは植物の自己治能力を動物に発現させる。また、植物を白い物体で覆い死滅させる。よく分からない部分も多い。
- ナノマシンは流出し地球上の植物と動物が激減(人以外の生物はほとんど姿を消した)
- ナノマシンは改良され複数の種類が存在している
- 感染症と害虫から解放された(それ以前は自然は害、敵とされていた)
- 国土はソーラー発電だらけ。各所でヘリカル核融合炉(核融合で直接発電する)が普及しており、除染が一般化している。
- 無限のエネルギーが得られるので軌道エレベーターは放棄(月面開発はエネルギーのため)。100年前のオーパーツと化しているのに動く。
- 人類は虫のことほとんど無知。芋虫さえ知らない。
- 海面上昇で陸地より海面は10mくらいたかい。いずれ沈むことが分かっているところは人が住んでいない。
- 温暖化で死にそうなくらい暑く、海もぬるい
- 日本の形はかなり変わっている。関東平野は水没。なぜか富士山が消し飛び海になっている。他にも丸く湾状に消し飛んで海になった箇所が複数。
- 宇宙に進出しており衛星開発が行われているっぽい
- サイボーグ化技術もある。
- 生物が死滅しているので魚を食べない。肉も食べないのだろう。生物由来の食物は身体に悪いと言われている。では人類は何を食べているのか?おそらく培養した植物由来の食糧だろう。
- 「いただきます」が消失している。
- シードニウムで体を植物化すると不老不死化する。
- 疑似重力が開発されていた。
- 月面基地から見る地球は雲ばかり
※静かの海はアポロ11号が人類で初めて着陸した場所。鉄版が置かれている。
※月と地球の距離は36万キロから40万キロと変動するので、あのケーブルの状態は実際はあり得ない。地球から見える月も10%大きさが変化する。中継地点で長さを調節しているのだろうか。
※温暖化が極度に進むと陸地は少なくなり、陸地は砂漠化が進むので地球の見た目も変わる。気温が上がると水蒸気量が増え雲が多くなるとともに、水面の高温化による対流活動の活発化によりより高い積乱雲が発生するようになる。太平洋やインド洋に数千キロに及ぶ連続した積乱雲列が形成され、ほぼ常時雷を伴う。
基本定義(推定)
- 形式:自己複製型・自己改変型ナノマシン
- 素材:植物由来セルロース/リグニン模倣構造を含むハイブリッドナノ素子
- 設計思想:植物の「組織再生・自己修復・恒常性維持」機能を、異種生物(特に動物)に移植することを目的に開発された
- 危険性:設計外の挙動として「植物を白い物質で覆い死滅させる機能」が発現(おそらく制御不能化)
2. 主な機能(設定からの推測)
- 植物的再生能力の移植
- 動物細胞にクロロフィル類似物質や細胞壁類似構造を付加
- 細胞周期を無期限に回す=不老化
- 自己修復・恒常性維持
- ナノマシンが損傷組織を自己複製細胞で置換
- 有害生物の排除
- 病原菌・寄生虫・害虫を検知し破壊する
- その結果、生態系から感染症・害虫が消滅
- 制御外の死滅機構
- 植物を「白い物体」で覆う → 光合成阻害 → 大規模な植物死滅
- これにより動物も食物連鎖ごと壊滅
- 多様な改良型
- 初期型:医療・延命用
- 改良型:戦略的生態系制御(害虫駆除・除染)
- 派生型:軍事利用(生物兵器化)や不老不死用
3. 技術原理の推測
- 自己組織化ナノ構造
→ 生体分子と融合しつつ自律的に構造変化 - 植物由来の情報テンプレート
→ 植物の成長・修復遺伝子のエピジェネティック模倣 - マルチモード挙動
- 修復モード:組織の維持・延命
- 防衛モード:外来生物の排除(害虫・菌類)
- 封鎖モード:植物を白色被膜で覆い生態系をリセット
南ぬカニ紀行

11ページの短い作品。石垣島のカニの誕生祭。
2025年8月14・15日に開催。ということは執筆時は未来の話だったわけだ。カニステル、シャカトウ、レンブ、キーツマンゴなどのレアなフルーツが売られている。
子ガニを海に迎えに行って背負うカニはフィクションだろう。
※手紙の葉っぱはタラヨウ
※シオマネキが我々は美味しくないと言っているが、有明海ではガニ漬けで食べる。その他、小さいカニはいずれも良い出汁が出る。食べないだけで不味いわけではないと思う。
最後の感想

雰囲気を楽しむ漫画。生き物や植物の絵は細かく書き込まれているから、生き物マンガであることは間違いない。とわいえ、架空の要素も入っていてどれがフィクションかわかりずらかったりする。レトロモダンメカニック?的な描写も多くメカニカルなのが好きな人にも面白いコマは多い。
マンガ的な面白さという作品はダイナミックに話が展開する「テフテ」が該当する。SF満載の未来の地球お話で、月、軌道エレベーター、ナノマシン、肉体再生、海面上昇、自然を完全に排除した極端な環境等がてんこ盛りだから。サイボーグと殴り合ったりするシーンもある。人間以外の生物と植物が消えた未来の世界。
全ての話にキリコが出てくるが、それぞれ設定が違う。共通するのは研究者ってことだけ。あと、月の話がでてきたりして微妙にテフテのつながりが感じられたり。素直に考えると黒髪のキリコが出てくるテフテの月面研究所が一番年代は古い。もしそうだとしたら不老不死の主人公だからこそできる月の遺産(避難させていたDND情報など)で二回目の文明が始まって今のような地球になった(喋る生物も発生)、キリコは生物の研究者として再出発したとかそんな感じ?
一番の魅力は絵柄かなぁ。生物の絵を眺めるのが好きな人にはおススメ。まったりした生き物&SF要素のマンガ。気になる人はぜひご購入を。
他に干潟が出てくる漫画としてはガタガールがある