さとかつ著「琉球蟹探訪」のレビュー

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お魚ガチが書きました
歩き方

自然大好き一家で自然保護協会家族会員。自然観察指導員 。熱帯魚はベタ、日本淡水魚はタナゴその他を20本以上の水槽で飼育中。
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琉球蟹探訪買った

『琉球蟹探訪』より

作者のさとかつさんはX上の漫画で知った。あと図鑑のインタビューでも。こんなマンガがあるんだあぁと知って評価も高いようだから買ってみた。図鑑のインタビューでも語られていた通り、背景や生物の絵はゲッチョ先生っぽい。

同人誌などで発表された作品を一冊にした本がこれだ。書き下ろしも含まれている。特にてふてという作品はこの本で一番ページ数が多い。5作品が収められており、一応それぞれの話は独立している。

https://x.com/satokatu031

琉球蟹探訪

『琉球蟹探訪』より

主人公のキリコが有給消化で2泊3日で沖縄に行ったら空港で2000円のカニツアーに参加することになった話。住処を開発で奪われた生き物たちが都会に進出しているという世界観。

ほんわか生き物漫画というふんいきだが干潟で遊んだ後、キリコは殴られて気を失う。


個人的には虐げられた生物たちが人間に大復讐するストーリー読んでみたいなぁ。このカニは優しすぎる。


※カニ像は満湖公園にある。作中では湖とだけ書かれている。

不気味な休息ベンチ「漫湖公園1・カニモニュメント」【沖縄本島】
海から上がってくる謎の怪獣……映画『パシフィック・リム』みたいですが、こちらは沖縄県那覇市にある、漫湖公園の休息所。東屋(あずまや)の屋根がカニの形をしてるんですよ。

間隙紀行

『琉球蟹探訪』より

研究者のキリコはミミズハゼ掘りに来たけど、流砂につかまり地下世界に落ちてしまう。

レトロな道具を集めているお化けミミズハゼ(ユウスイミミズハゼ?)が地下に住んでいて、「母さん」のところに連れて行ってもらうが、その母さんが異質。お化けミミズハゼの舌にも同じ三つ目がある。確かに地球外生命体っぽいよね。イドミミズって。

宇宙人が地球に来たらまず最初に学名が付けられるんだろうか。。。

イドミミズハゼ、とれた。
イドミミズハゼとタネハゼの生息地探索|河口干潟で採集記録
宮崎県の河口干潟へGO琉球蟹探訪、間隙紀行より夏休み終盤、「ガサガサ行きたいよにゃぁ」とのことで行ってきました。先日買って読んだ琉球蟹探訪の話にも出ていたミミズハゼを、ぜひとも捕りたいという事で場所を...

干潟忘備録

『琉球蟹探訪』より

卒論を書くためにサンプリングをしている頃のキリコ。シラヌイという寄生生物に血を吸わせる代わりに、生き物研究の手伝いをしてもらう。一緒に有明海にも来た。

最後は夢落ち。単純に読めば、寄生生物なんて「なーんだゆめか」なんだけど、シラヌイの最後のセリフからすると彼は地球外生命体(もしくは単純に海の生き物)かなにかで、最後の一刺しで記憶を消したっポイと思った。だが、冒頭の回想のセリフから忘れたわけでなく、こういうこともあったと思い出した話。

※タモは三谷漁具のシステムタモ。本の表紙にもシステムタモ。

玉網 | 三谷釣漁具店

テフテ

『琉球蟹探訪』より

この作品は100ページ以上あり、この単行本のメインなのかもしれない。主人公キリコの謎に迫るような作品。

失われた自然を代替科学で埋めた人類からはみ出した人が過去の遺物を使って月へ向かうという壮大なテーマ。


SF要素満載で地球の環境が終わっている。ちょっと整理してみたい。

  • 軌道エレベーターが日本から月の中継地点?まで伸びていた。
  • 月面でキリコは研究をしていた
  • 月面は観光地だったが今は行ったら帰って来れない
  • インターネットはインフラが維持できなくなってラジオに退化?
  • 同僚がシードニウムというナノマシンを開発
  • シードニウムは植物の自己治能力を動物に発現させる。また、植物を白い物体で覆い死滅させる。よく分からない部分も多い。
  • ナノマシンは流出し地球上の植物と動物が激減(人以外の生物はほとんど姿を消した)
  • ナノマシンは改良され複数の種類が存在している
  • 感染症と害虫から解放された(それ以前は自然は害、敵とされていた)
  • 国土はソーラー発電だらけ。各所でヘリカル核融合炉(核融合で直接発電する)が普及しており、除染が一般化している。
  • 無限のエネルギーが得られるので軌道エレベーターは放棄(月面開発はエネルギーのため)。100年前のオーパーツと化しているのに動く。
  • 人類は虫のことほとんど無知。芋虫さえ知らない。
  • 海面上昇で陸地より海面は10mくらいたかい。いずれ沈むことが分かっているところは人が住んでいない。
  • 温暖化で死にそうなくらい暑く、海もぬるい
  • 日本の形はかなり変わっている。関東平野は水没。なぜか富士山が消し飛び海になっている。他にも丸く湾状に消し飛んで海になった箇所が複数。
  • 月以外の宇宙に進出しており衛星開発が行われているっぽい
  • サイボーグ化技術や電脳化が軍で行われている。
  • 生物が死滅しているので魚を食べない。肉も食べないのだろう。生物由来の食物は身体に悪いと言われている。では人類は何を食べているのか?おそらく培養した植物由来の食糧。
  • 「いただきます」が消失している。
  • シードニウムで体を植物化すると不老不死化する。
  • シードニウムで失った手なども復元できる。シードニウム化を進めると不老不死となる。
  • 疑似重力が開発されていた。
  • 月面基地から見る地球は雲ばかり。

※静かの海はアポロ11号が人類で初めて着陸した場所。鉄版が置かれている。

※月と地球の距離は36万キロから40万キロと変動するので、あのケーブルの状態は実際はあり得ない。地球から見える月も10%大きさが変化する。中継地点で長さを調節しているのだろうか。

※温暖化が極度に進むと陸地は少なくなり、陸地は砂漠化が進むので地球の見た目も変わる。気温が上がると水蒸気量が増え雲が多くなるとともに、水面の高温化による対流活動の活発化により、より高い積乱雲が発生するようになる。太平洋やインド洋に数千キロに及ぶ連続した積乱雲列が形成され、ほぼ常時雷を伴う。

基本定義(推定)

  • 形式:自己複製型・自己改変型ナノマシン
  • 素材:植物由来セルロース/リグニン模倣構造を含むハイブリッドナノ素子
  • 設計思想:植物の「組織再生・自己修復・恒常性維持」機能を、異種生物(特に動物)に移植することを目的に開発された
  • 危険性:設計外の挙動として「植物を白い物質で覆い死滅させる機能」が発現(おそらく制御不能化)

2. 主な機能(設定からの推測)

  1. 植物的再生能力の移植
    • 動物細胞にクロロフィル類似物質や細胞壁類似構造を付加
    • 細胞周期を無期限に回す=不老化
  2. 自己修復・恒常性維持
    • ナノマシンが損傷組織を自己複製細胞で置換
  3. 有害生物の排除
    • 病原菌・寄生虫・害虫を検知し破壊する
    • その結果、生態系から感染症・害虫が消滅
  4. 制御外の死滅機構
    • 植物を「白い物体」で覆う → 光合成阻害 → 大規模な植物死滅
    • これにより動物も食物連鎖ごと壊滅
  5. 多様な改良型
    • 初期型:医療・延命用
    • 改良型:戦略的生態系制御(害虫駆除・除染)
    • 派生型:軍事利用(生物兵器化)や不老不死用

3. 技術原理の推測

  • 自己組織化ナノ構造
    → 生体分子と融合しつつ自律的に構造変化
  • 植物由来の情報テンプレート
    → 植物の成長・修復遺伝子のエピジェネティック模倣
  • マルチモード挙動
    • 修復モード:組織の維持・延命
    • 防衛モード:外来生物の排除(害虫・菌類)
    • 封鎖モード:植物を白色被膜で覆い生態系をリセット

百年前に建造された日本発の軌道エレベーターは、いまや役目を終えた過去の遺物とされながらも、なお軌道上に聳え立ち、静かに稼働を続けていた。かつて月は観光地として賑わったが、いまは帰還不能の地と化し、地球から切り離された人々の拠点が点在するだけである。

月面で研究を続ける科学者キリコは、人類最後の希望とも脅威ともいえる技術「シードニウム」に直面していた。それは同僚が生み出したナノマシンであり、植物の自己治癒能力を動物に転用する一方、地球上の生態系を白い膜で覆い尽くし、ほとんどの生命を消し去ってしまった。虫や魚は伝説となり、肉や野菜は「培養された代替物」しか存在しない。人々の食卓からは「いただきます」という言葉さえ消え去った。

無限に近いエネルギーを供給するヘリカル核融合炉とソーラー発電網により、人類はエネルギーの心配から解放された。しかし、その代償として地球の海面は上昇し、日本列島の姿は激変。関東平野は海に沈み、富士山すら忽然と消失していた。灼熱の気候とぬるま湯のような海、そして絶え間なく空を覆う雲。

シードニウムはさらに改良され、不老不死さえ実現する技術へと変貌していく。欠損した手足を再生し、やがて人間を「植物化」して死を超越させる――その誘惑に抗える者は少ない。だが同時に、それは人類を人類たらしめる境界線を溶かし去っていくものでもあった。

キリコは、月から見下ろす曇天の地球を前に思索する。
――シードニウムは救済か、それとも終焉か。
――人類は進化を選んだのか、それとも「自然」を殺したのか。

放棄されたはずの軌道エレベーターが、なお稼働を続ける理由。
海に沈みつつある地球と、進出し始めた宇宙との狭間で、キリコは人類の未来を左右する選択に迫られていく。

ふじみのキリコは、月にただ一人残された生存者だった。
人類はエネルギーを手にしながら、生き物のいない世界に行き詰まってしまった。

しかし、月面基地には「地球の記憶」が眠っていた。植物や動物の遺伝子サンプル、凍結された種子たち。キリコは孤独のなか研究を続け、シードニウムを改造し、その力で失われた生命を地球へと呼び戻した。

やがて地球には再び緑が芽吹き、池にはアメンボがすいすいと滑り、川には魚影が走った。森にはリスが駆け回り、空には鳥が戻ってきた。
だがそのとき、奇妙なことが起こった。

「やあ、ようやく森に実りが戻ったね」
リスがそう語りかけてきたのだ。

最初は錯覚かと思ったキリコだったが、スズメは肩に止まって「今日はパンじゃなくて稲穂が食べたい」とねだり、カエルは夜ごと「音程の練習に付き合って」と誘ってきた。

――動物たちが、しゃべるようになっていた。

その理由は、後に明らかになる。
復活した生物の中に「地球外からの意識」が宿っていたのだ。
遠い星から旅をしてきた知的生命体が、シードニウムを媒介にして地球の動物に乗り移り、新しい知性として根を下ろしたのである。

だが彼らは侵略者ではなかった。
むしろ地球を愛し、人類の孤独を癒そうとする友好的な存在だった。リスは森の世話を買って出て、ミツバチは花畑を「宇宙の図書館」と呼んで知識を語り、クジラは深海で星の歌を響かせた。

「おはよう、キリコ!」
犬が笑いながら駆け寄ってくる。
「今日はどこに行こう? 森? それとも海?」

人類の子どもたちは、蝶やカブトムシと会話しながら育ち、昆虫の成長や魚の群れの動きを「生きた教科書」として学んだ。食卓には再び野菜や果物が並び、皆が食事の前に「いただきます」と言う習慣を取り戻した。

こうして人類は、異星から訪れた知性と共に、新たな自然と共存する未来を得た。
それは侵略でも支配でもなく、ほんわかとした共生だった。

――生き物たちの声は、地球に戻った「命の響き」であり、遠い宇宙の仲間からの贈り物だったのだ。

引き潮のころ、復活した地球の干潟はにぎやかだった。
泥の匂いがあたりに満ち、カニたちの穴が無数に並んでいる。波が静かに引いた跡には、ちいさな水溜りが点々と残り、そのなかでアメフラシがとろりと身を揺らし、ハゼがぴょこんと顔を出していた。

キリコが膝をついて観察していると、穴から一匹のチゴガニが飛び出してきた。
「やあやあ!人間さん!今日は右のハサミがいい動きをしてるだろ?」
彼は誇らしげに、ぱちん、ぱちんと片方のハサミを振り上げて見せた。求愛ダンスをするように、せわしなく。

すると別の穴からアシハラガニが顔を出した。
「まったく、チゴガニは落ち着きがない。ほら、ぼくらの泥団子の方がずっと芸術的だよ」
彼らの巣穴のまわりには、丸められた小さな泥玉が幾重にも並び、ちょっとした干潟のオブジェになっていた。

そこへコメツキガニの群れが現れた。小さな体で器用に砂をつまんでは口に運び、きれいに“砂団子”を吐き出していく。干潟の表面はまるで水玉模様の布のように飾られていった。
「わたしたちは干潟の清掃係さ。砂の中から栄養をいただいて、表面をきれいに整えるんだ」
「ほら、ほら、ここ歩きにくいでしょ?すぐ整えてあげるよ!」

さらに大きなハクセンシオマネキがのそのそとやってきた。
彼は片方の巨大なハサミを誇らしげに掲げ、
「このハサミこそ干潟のシンボル!遠くからでも見えるでしょ?あれでメスを呼ぶんだ。どう?迫力あるだろ?」
と自慢げに話す。

キリコは思わず笑ってしまった。
干潟は、カニたちの小さな街だった。せっせと掃除をする者、踊って自慢する者、芸術家のように泥玉を積む者。彼らはそれぞれに役割を持ち、そしてみんなよくしゃべった。

ふとチゴガニが足元まで駆け寄り、ちょこんと立ち止まった。
「ねえ、人間さん。昔はぼくら、ただの“生き物”だったんでしょ?でも今は、言葉がある。だから、友だちになれるんだね」

その言葉に、キリコは胸の奥があたたかくなるのを感じた。
潮の満ち引きと共に、生命が語りかけてくる干潟――それは、ほんわかとした新しい地球の姿だった。

南ぬ蟹探訪

『琉球蟹探訪』より

11ページの短い作品。石垣島のカニの誕生祭。
2025年8月14・15日に開催。ということは執筆時は未来の話だったわけだ。カニステル、シャカトウ、レンブ、キーツマンゴなどのレアなフルーツが売られている。

キリコは栃木県に住んでいる。

子ガニを海に迎えに行って背負うカニはフィクションだろう。

※手紙の葉っぱはタラヨウ
※シオマネキが我々は美味しくないと言っているが、有明海ではガニ漬けで食べる。その他、小さいカニはいずれも良い出汁が出る。食べないだけで不味いわけではないと思う。

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最後の感想

『琉球蟹探訪』より

雰囲気を楽しむ漫画。生き物や植物の絵は細かく書き込まれているから、生き物マンガであることは間違いない。とわいえ、架空の要素も入っていてどれがフィクションかわかりずらかったりする。レトロモダンメカニック?的な描写も多くメカニカルなのが好きな人にも面白いコマは多い。

マンガ的な面白さという作品はダイナミックに話が展開する「テフテ」が該当する。SF満載の未来の地球お話で、月、軌道エレベーター、ナノマシン、肉体再生、海面上昇、自然を完全に排除した極端な環境等がてんこ盛りだから。サイボーグと殴り合ったりするシーンもある。人間以外の生物と植物が消えた未来の世界。

全ての話にキリコが出てくるが、それぞれ設定が違う。共通するのは研究者ってことだけ。あと、月の話がでてきたりして微妙にテフテのつながりが感じられたり。素直に考えると黒髪のキリコが出てくるテフテの月面研究所が一番年代は古い。もしそうだとしたら不老不死の主人公だからこそできる月の遺産(避難させていたDND情報など)で二回目の文明が始まって今のような地球になった(喋る生物も発生)、キリコは生物の研究者として再出発したとかそんな感じ?

一番の魅力は絵柄かなぁ。生物の絵を眺めるのが好きな人にはおススメ。まったりした生き物&SF要素のマンガ。気になる人はぜひご購入を。

他に干潟が出てくる漫画としてはガタガールがある