シロヒレタビラ
タナゴ水槽の小さめのシロヒレタビラの背びれがもげていました。穴あき病です。原因はエロモナス菌でエロモナス病ともいわれる水が悪くなったり、弱って抵抗力が下がった魚が発症する病気。
同じような原因で赤斑病、復水病やポップアイなども発生することがりますが、穴あき病は初期なら隔離と薬浴で治療可能です。今回のケースは赤斑から穴あきへと病状が進みヒレが完全に消失しています。原因は他の魚よりもサイズが小さく追いかけまわされたりして弱ったのでしょう。
穴あき病とは?
穴あき病は常在菌の非運動性のエロモナス サルモニシダAeromonas salmonicidaによって引き起こされる病気です。運動性のないグラム陰性菌で抗菌剤で治療します。運動性エロモナスが引き起こす症状(赤班病、立鱗病、ポップアイ、松かさ病)とひとまとめにして、エロモナス病ともいわれます。
初期症状は鱗が赤く発色し、剥がれた後に白い真皮や筋肉が露出します。穴が開いた後は症状の進行は少し遅くなり、内臓まで達することはありませんが、日々体液が流出し運動能力と体力を奪っていきます。エロモナス菌自体は強い病原性はないけども、抵抗力が少ない魚は他の症状も併発し死につながります。よーするに弱った個体が死ぬ前に発症しやすい病気の一つです。
発生が多い時期は春と秋です。朝晩の水温差で生体の抵抗力と水槽内のバクテリアが弱って濾過能力が不安定になることで発症します。エロモナス菌が活発なのは 20~25℃といわれています。28度以上になると菌の活動が弱り、軽症の場合は塩水浴で自然治癒することもありますが極まれです。隔離治療しなければ永遠に治らない病気と思った方がイイです。つまり、水槽で見つけたら一刻も早くとりあえず隔離してください。組織の欠損を伴うので隔離治療は長引く場合が多く長くて30日ほどかかる時もあります。
時には水カビなども併発することがあり、その場合はマカライトグリーンなど他の薬も併用して治療します。
他の魚にうつるかどうかですが、個別の魚の抵抗力に関係するので基本的には移りません。でも水槽内の水が悪い場合は他の個体もいずれ発症するでしょう。
エロモナスで死んだ個体は菌の温床になるので一刻も早く取り除くべきですが、他の個体が食べた場合にワクチン効果を得て、エロモナス菌に抵抗力を持つ事例が確認されています。
穴あき病の治療方法
穴あき病の治療は非運動性のエロモナス菌による病気なので観パラD(オキソリン酸)での治療が定番です。赤斑病や松かさ病、ポップアイなどの運動性のエロモナスの場合もオキソリン酸は効きます。
他の薬としてはエルバージュエースとグリーンゴールドF顆粒などのフラン剤も有効です。オキソリン酸とフラン剤の違いですが、オキソリン酸の方はグラム陰性菌にしか殺菌作用が無いので、グラム陽性菌のろ過バクテリアに影響がないのです。水草にも安心とされます。
しかしなが抗菌剤を飼育水槽で使うケースはまれであり、手持ちの抗菌剤をまず使えばいいでしょう。他にオキソリン酸は液体なので小型水槽でも使いやすいという点があります。
合わせて0.5%の塩数浴を行います。エロモナス菌は0.4%以下でしか増殖ができないからです。塩水浴にすれば体液の流出を低減し、原因菌の増殖を抑えられます。
また、ヒーターも有効です。可能なら28-30に加温します。この温度だとエルモナスの活動が抑えられますし、水槽内の水温差が減り生体の体力維持にも有効です。
適切に治療すれば完治もできる病気ですが、治療までに時間がかかり重症やすでに弱っている場合、老齢個体の場合は治療は難しいです。隔離治療を始める時点で、すでに明らかに弱っている場合は治療は難しいと思われます。一方、見た目の割に元気な場合は回復させられる可能性があります。
エロモナス病に効く薬
グリーンFゴールド顆粒 | ニチドウ | ニトロフラゾン スルファメラジンナトリウム | 細菌性疾病(尾ぐされ病・皮フ炎など) | 水32〜40Lあたり本剤1g(ニトロフラゾンとして約0.48g)を徐々に加えた後、よく混和して薬浴。 |
グリーンFゴールドリキッド | ニチドウ | オキソリン酸 水酸化ナトリウム | エロモナス属による穴あき病の早期治療、エロモナス属による穴あき病の治療 | 穴あき病の早期治療には、本品10mLを飼育水10Lの中に徐々に加えた後、よく混和して4時間薬浴する。穴あき病の治療には、本品10mLを飼育水10Lの中に徐々に加えた後、よく混和して5~7日間薬浴する。 |
観パラD | ニチドウ | オキソリン酸 水酸化ナトリウム | 細菌感染症(穴あき病) | 穴あき早期10Lあたり1ml4時間。穴あき治療5-7日間。 |
エルバージュエース | ニチドウ | ニフルスチレン酸ナトリウム | エロモナス感染症(穴あき病、スレ症、立鱗病)、カラムナリス病(鰓腐れ、尾腐れ、口腐れ)。白点病にも効く(体験)。 | 100Lあたり、1~2g 24時間 |
観パラDで治療開始
エルバージュで治療しようと思ったんですが、切れていたのでパラザンDを新たに購入しました。パラザンDは液体なので少量でも使いやすいのが利点です。グリーンFゴールドリキッドも同じ抗菌剤のオキソリン酸ですが、観パラDの方が安いので良いですよ。グリーンFゴールドリキッドは観パラDを薄めて小型水槽で使いやすくした製品になります。
10リットルに対し、1mlを使用します。今回は10リットルバケツで隔離しましたが、水量は8リットルくらいなので使用量は0.8mlになります。
※精密計量器で1滴の量を計測してみましたが、3滴で0.11mlでした。つまり1滴あたり0.03ml-0.04mlのようです。したがって1リットル当たり3滴、10リットルなら27-30滴くらいになります。
薬の使用量は下記計算フォームで計算するのが確実です。
穴あきでは塩は必須
穴あき病になると浸透圧の関係で血や体液が流出するので、それを止めるために0.5%の塩を投入します。これはほぼ必須の処置です。急に濃度をあげると負担となるので二回程度に分けて塩を投入します。
また、エロモナス菌は塩分が0.5%以上となるとこれ以上増えることができないとされており、特に塩水浴の効果が高い病気になります。
つまり、エロモナス菌に由来する病気の場合は塩の投入はほぼ必須です。
0.5%の塩水というのは水量10リットルなら約50gの塩の量です。下記ページで計算してください。
治療の流れ
エサは2日目から給餌しました。糞を回収後餌をやると、どのくらい食べてどのくらい糞をしたががわかります。もし生体が病状の割に元気な場合は、効率的に餌を食べさせることで完治しやすくなります。
体力が無く餌も食べず、糞もしないような個体の場合だと完治は難しいかもしれません。
- 事前準備隔離環境準備
バケツなどを準備。置く場所は水温差が無く静かな場所。水は飼育水。あまり小さい場合は必要ないが、エアレーションをする(エアーは弱め。強いと弱る)。ヒーターがあれば飼育水槽に近い温度に設定し稼働させる。
- 捕獲魚を捕まえるて隔離する
素早く捕まえる。コツは網を二つ使うこと。発病個体のみ隔離する。
- 塩浴魚を隔離して、塩を入れる
0.5%、つまり1リットルにつき5gの塩を準備し3回ほどに分けて溶かす。
- 薬浴観パラD投入
観パラDなら10リットル当たり1ml。グリーンFゴールドの場合はその10倍。つまり10Lあたり10ml。エサは毎日投入する。糞掃除は必須。油膜が出た場合はキッチンペーパーを浮かべて取る。
- 水換え3日目 最初の水換え
半分の水換え 減った塩を追加。観パラDの効力が切れたとみなし、最初に入れた量をまた投入する。
- 水換え以後3日ごと 水換え
半分。減った塩を追加。観パラDを再び最初の量を投入。
- 水換え14日目くらい-25日
治っているはず。もしくは治療傾向が続いているはず。完治と判断した場合は水槽に戻すか、負担の少ない別の新し環境などで育てる。
治らないようならそのまま続けるか、エルバージュエースかグリーンFゴールド顆粒での薬浴に切り替える。
穴あき病は治療が長引く病気なので30日かかるケースもある。焦って早く飼育環境に戻すと再発の可能性も高いので注意する。
治療結果
観パラDの投入を4回して治療終了としました。
3回目の時点で赤みは消えていましたが、治療後も鱗等は欠損したままで当然ながら背びれは全く回復していません。ヒレは骨が消えたらもう復元は無理なのです。
とても元気で、さっそく他の魚を追いかけまわしていました。鱗ないんだけど生えてくるのかな?
1週間後も活発でとても背びれが無いとは思えないほど活発。相変わらず他のタナゴを追いかけまわし泳るので困る。
今回使用したアイテム
観パラDもグリーンFゴールドリキッドも同じオキソリン酸です。ゴールドリキッドの方が小型水槽に向いていますが、観のパラも小型で使いやすいのでお得なカンパラの方がイイですよ。同じ会社ですし。
ゴールド顆粒も抗菌剤ですがフラン系の別の薬剤になります。