タナゴを人工授精で繁殖させる方法解説-二枚貝不要

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お魚ガチが書きました
歩き方

自然大好き一家で自然保護協会家族会員。自然観察指導員 。熱帯魚はベタ、日本淡水魚はタナゴその他を20本以上の水槽で飼育中。
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タナゴの人工授精について

貝に群がるニッポンバラタナゴ

タナゴ飼育の醍醐味は繁殖です(きっぱり!)。というのも、婚姻色の美しさや産卵管というタナゴの特徴は産卵行動のためのものだからです。

最初は繁殖させる気が無くても、季節と共に色が付き、産卵管が伸び、コケ取り要因の石巻貝に一生懸命産卵行動をしている成熟ペアを見たら、そりゃ卵産ませたくなりますよ。

でも二枚貝に産ませるのは入手や管理に問題があります。二枚貝は安く売っていても貴重な貝だし、室内では長期飼育が難しいです。効率的も決してよくなく、手間もかかります。これはこれで楽しいといえば楽しいので屋外で貝をうまく飼育できるなら、一度挑戦してみるのもいいとは思います。産卵行動をしている様子は見てて釘づけになってしまうくらい興味深い事で一日中見てても飽きません。その後も毎朝、今日は浮上しているかな?と貝の水槽を見るのは楽しい。

でも人工授精と二枚貝を比べるとあっけないほど、人工授精の方が簡単なんです。うまくいけば浮上する稚魚も多い。メスが成熟していたら採卵は簡単ですが、浮上までうまく管理しないと、浮上前に弱って死にます。皆元気で動き回っていたのに、浮上近くになるとどんどん弱り、結局全滅させたこともあります。
稚魚たちが死んでしまった場合は、その原因を分析してまたチャレンジできます。というのも、数週間でまた卵が取れるから。

上手く成功させるコツは、十分に成熟したメスを使うことと、常に清潔な水で管理する事。卵が元気なほど丈夫な稚魚が生まれるのは明白。

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タナゴ選びは重要

水槽では婚姻色バリバリだったけど、観察ケースに入れたら消えてしまった。これ全部自家繁殖のニッポンバラタナゴの純系です。

タナゴは当然ながら繁殖モードに入った個体を使います。オスなら婚姻色メスは産卵管が伸びた個体で大きく育っている個体を選びます。メスは産卵管がきちんと伸び、さらに先っぽまで癒着せず卵がだせる状態が必要です。お腹が膨れていても、タイミングが早いと産卵管から卵が絞り出せません。

春から水温が上がってくると自然にこのモードになりますが、水槽内に貝がいるとさらに確実です。貝の匂いを頼りにしているらしく、壁にいる石巻貝にニッポンバラのペアが一生懸命産もうとしている光景を何度も見ています。ちなみに、タナゴは匂いと水流を感知して二枚貝を探しているそうです。上部フィルターの吸水口に産卵行動をしてフィルター部分で稚魚が孵化していた例もあるそう。


既に産卵管に卵見えてしまうほどメスが成熟していれば、まず確実に卵は簡単に絞れます。産みたくてしょうがないメス。時期定期には3月後半からでも卵は採れますが、どうせならある程度の数が欲しいので、春産卵のタナゴなら4月、5月、6月、7月が適期でしょう。もちろん品種や環境にもよります。初心者の人は時期を焦らず、5月後半・6月くらいまで待ってやるのがオススメです(産みたくてしょうがないメスがいるならはタイミングを逃さず早めでもやるべき)。というのも、時期を早くやっても卵が取れずメスを弱らせただけという悲しい結末になる可能性もあります。

1年目のメスはオスに比べて大きさが小さい場合が多いので、可能なら2年を選ぶと卵の数も大きさも大きくてやりやすいでしょう。タナゴが小さくてもモードに入れば卵は絞れますが、数が2・3個しかとれないです。やはりメスは少しでも大きく、お腹が膨らんでいるのがイイです。もしそういう個体がいないなら、3月ごろから餌を増やして大きく育てましょう。過密状態だとメスは小さくなりがちですで、飼育密度を見直すのも賢い。少しでも数多く卵を取りたいなら繁殖モードの雄一匹と雌複数匹だけ別の水槽にして、ハーレム状態にすれば気分を盛り上げてやる絞れる卵も増えると思います。

水槽の中はなるべく他の種類の魚は少なめが適しています。産卵管が伸びるとドジョウが吸い込んでしまったり、荒っぽい魚から逃げるために傷つけりる場合があるからです。

一日に何回も餌をあげる(飽和給餌)と、卵の数が増えます。

可能ならメスは複数匹の同時に卵を絞りましょう。その方が管理が楽で効率的です。

稚魚が浮上する(自立して泳いで餌を食べる)までの期間ですが、14日から20日です。水温が高いほど早くなります。

タナゴの繁殖期の産卵化の長さや期間

名前産卵期間
(盛期)
浮出まで成熟最低
サイズ
産卵管平均
(最短長)
ヤリタナゴ3-8月(4-6月)3週間43mm21mm(12-28mm)
アブラボテ3-8月(4-6月)3週間29mm20mm(9-28mm)
ミヤコタナゴ4-7月(6月)3週間32mm28mm(20-35mm)
ニッポンバラタナゴ3-8月(5月)3週間24mm34mm(8-72mm)
タイリクバラタナゴ3-8月(5月)2週間34mm36mm(23mm-52mm)
カゼトゲタナゴ3-8月3週間26mm13mm(8-21mm)
スイゼンゼニタナゴ3-6月3週間25mm14mm(10-16mm)
タナゴ(マタナゴ)4-6月3週間34mm30mm(18-36mm)
イチモンジタナゴ4-7月(7月)3週間27mm31mm(19-43mm)
セボシタビラ2-8月(6月)3週間47mm29mm(19-37mm)
シロヒレタビラ3-8月(4-6月)3週間32mm33mm(17-47mm)
ミナミアカヒレタビラ3-7月(5月)3週間38mm27mm(14-42mm)
キタノアカヒレタビラ4-6月(5月)3週間38mm38mm(27-54mm)
アカヒレタビラ5-6月(5月)3週間40mm22mm(11-35mm)
カネヒラ9-11月
(9-10月)
4カ月40mm28mm(19-40mm)
ゼニタナゴ9-10月
(9月下旬)
8-9カ月37mm35mm(26-46mm)
イタセンパラ9-11月
(9月下旬-10月上旬)
7-8カ月34mm26mm(16-31mm)
オオタナゴ4-7月
(5月-6月)
1カ月55mm63mm(4-93mm)

参考:日本のタナゴ

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浮上!浮出とは?

ヌマガイに群がるニッポンバラタナゴ

タナゴは二枚貝の中で数日で孵化し、貝に吐き出されないようわずかに運動してエラまで移動したり、突起状の翼を出して引っかかったりしつつそこで成長します。

2週間から3週間後に主に朝に貝から出てきて、水面付近を漂います。その後数日間同時期に産み付けられた稚魚が浮出し続けます。貝から出てくる行為を浮出といいます。

一方、浮上とはタナゴが人工授精や貝から出てきて正常に泳げる状態です。水平に泳いで餌も食べれます。正常に浮上までこぎつけるには、ヒレなどを成長させ、浮袋に空気を取り込むことが鍵になります。斜めにチョンチョンと水面目指して泳ぐ状態は浮上の一歩手前。

人工授精時に準備する物

  • 浅いタッパー(サイズは300mlから500mlくらい)
  • 大きめのスポイド(ダイソーで買う)。スポイド汚すぎ・・・。漂白しましょう!
  • 親をすくう網や、一時的に入れておくケースなど
  • 水温や保温を一定にする何らかの工夫。お勧めは発泡スチロールの中での管理。
  • カルキを抜いた新鮮な水
  • メチレンブルー

タナゴ人工授精の実際の手順

オスとメスを準備する

これはカゼトゲの雄。近所で釣った。二年目。水槽内では婚姻色バリバリだったが、取り出してケースに入れたら消えてしまった。

事前に網ですくって親を準備しておきます。どうせなら雄雌複数準備しておきましょう。生体数が多い水槽から狙った魚を捕るのは結構難しいです。網を二つ用意してさっさと目標のタナゴを捕まえましょう。あまり手間取るとタナゴたちが長時間暴れることになり弱ります。

選ぶメスは産卵管がいつもより伸びてお腹が丸いやつで、すでに飼育水槽で卵を産むような動作をしたり産卵管に卵が出てきてしまうような個体だと完璧。オスは婚姻色やおいぼし等々。産卵管の色も判断材料になります。カゼトゲタナゴなら色が黒から白になったりします。
オスの方が先に婚姻色などが出ますが、遅れてメスの繁殖時期となります。メスの見極めの方が難しいです。

  • お腹が膨れたメスは上から見てもポッコリしています。
  • 産卵管が伸びていても先端だけ色が違ったり、ちぢれている場合は十分に産卵管が発達していません。

メスから卵を取る

ニッポンバラタナゴのメス

タッパーにメスだけを入れ飼育水を体の半分ほどの深さにします。深いと跳ねて暴れるからです。それから手の温度が高いとタナゴにダメージを与えるので、水につけるなどして冷やしておいてください。

メスから卵を出す方法ですが、指で頭の方向からなぞると次々と産卵管から出てきます。指は二本使って頭と背中あたりからなぞります。指を前後や奥手前にわずかにこするように震わせてマッサージするようになぞります。出ない場合は少し力を入れマッサージしますが、まったく出る気配がないなら今回はあきらめます。上のメスのようにお腹が膨らんで産卵管が出口で癒着せず貫通しているようなら、卵は出るはずです。卵が全く出ない時もあります。無理に出そうとすると弱るので水槽に戻しましょう。産卵管が途中までしか開いていないケースもよくあります。卵が途中までしか出なかった時もあきらめて水槽に戻しましょう。卵は排出されるかまたお腹の中に戻ります。

卵が一度出始めると次々と産卵管に出てきます。細長い状態で出ますが、すぐに楕円形に変化します。卵がどんどん出てくるなら出していいですが、むりやり全部出そうとする必要はありません。最後の方で数を欲張ると未成熟の卵が出てしまいます。産卵管の途中に卵が残るのですが、それは指の先で優しくつまんで押すと自然に出ます。

もし、産卵管に卵が残ってしまった場合はそのままでもかまいません。水槽に戻すと自分で産んで捨てたり、元気な個体は自分で食べます(くるっとひるがえってパックッ)。

今回は6個ほどの卵が出ました。小さなメスだったから少ないです。
どうしても卵を絞るとメスはダメージを受けて弱ってしまいます。飼育水槽が過密気味だったり、荒っぽい魚がいる場合はいったん別のバケツか何かで数時間落ち着かせてから飼育水槽に戻すことも考慮しておきましょう。
鱗などがはがれる場合もあり、擦れ傷がひどいようでしたら、グリーンFやエルバージュエースで薬浴して戻しましょう。

  • タッパーが小さかったり、高さがあると指を入れ難く卵が絞りにくい。
  • 小さい個体から欲張って卵を絞らない。
  • 産卵管の先端がつまってどうしても出ない場合は諦める。
  • 卵が沢山産卵管に残ってしまった場合は、隔離水槽に半日ほど入れ置けば卵はおなかに戻るか、捨てられる。
  • なるべく短時間にやるために準備は万全にしておく。
種類により卵の形状は違う。これはニッポンバラ。この段階で細かったり正常でない卵も発生します。

オスの精子をかける

婚姻色が十分出てなわばりを主張したり繁殖行動しているオスを選ぶ。

まず、卵の入ったタッパー内の水をさらに減らしてオスを入れます。

オスのお腹を優しく押せば精子は出ます。卵の出し方とほとんど同じ。うっすら白い色が見えるはずです。ちゃんと出たかどうか自信がない場合は、用意しておいたもう一匹の雄も使ってください。

精子が出たら1分ほど容器を揺らして受精させます。

メスの卵が多い時などもオスを変えて受精させましょう。例えば10や20個ごとにタッパーを変えて違うオスを使うとか。同じ遺伝子だけ増やさないようにする処置です。

タナゴの卵は8分経っても100%の受精能力を持つそうです。焦らず落ち着いてオスの精子を出して受精させましょう。一方、精子は2分で70%、3分で10%と寿命が短いです。

貝に托した卵をめぐる精子競争

精子を洗い流す

そのままタッパーで飼育するので、3回ほど水換えしてオスの精子を綺麗に取り除きます。水換えはスポイドで行います。誤って卵を吸ったり捨てたりしないように注意。準備した綺麗な水で完全に精子を洗い流しましょう。精子が残っていると水カビが発生します。

剥がれた鱗や粘膜、フンが混じっているので、割と念入りに水換えしましょう。

受精後の管理

受精させて水を清潔にしたらメチレンブルーをわずかに入れましょう。一滴以下の少量です。これは水カビを防ぐためです。

受精後も同じタッパーの中で孵化から初期成長まで行います。管理の基本は水換えくらいしかありません。とわいえ、その水換えは慎重にやる必要があります。

最初の水換えは3日後でその後の水換えの量や頻度は1~3日ごとでいいのですが、水量に対して卵が多いと早く水が悪くなります。最もおすすめは毎日水換えすることです。稚魚が成長するにつれ汚れやすくなるので、容器を分けるなども検討してください。1日後に様子を見て明らかに奇形の卵があればスポイドで取ります。

飼育タッパーは温度変化の少ない環境に置く。夏場以外なら湯煎式にしてヒーターを使う。

タッパーやスポイドは清潔に。最初消毒しておく。

水温合わせは必須だから同じ場所に水換え用の水を準備しておく

水換えは、浮遊物や老廃物をスポイドで吸い取り、抜き取った分水を足す方法で行う。

最初の水換えは3日後、その後は1~3日後に半分以上の水を入れ替える。全量でもいい。

なるべく静かな環境がイイ。暗い方がいいと思う。

破裂や細長い、未授精の卵は取り除く。

お勧めの方法は水を張った蓋つき発砲スチロールの中で管理する方法。タッパーと水換え用の水の入ったペットボルトを水に浮かべておきます。この方法なら一日の温度変化を最小限にし、水の温度も同じになります。蓋をすれば光と音などを遮断し静かな環境で育てられます。

気をつけるべきこと

ニッポンバラタナゴ、背びれなどができる前に卵黄が無くなりその後死亡。死亡すると色が薄くなる。

あくまで我が家の経験ですが、なるべく動かない状態で日数を経過させて大きくさたほうが浮上につながると思います。なので、湯煎式で水温の変化をなくし、さらに発泡スチロールの中で暗い状態にしています。稚魚を動かさない方が、無駄な体力を使わず生き残りやすいと思うからです。特に、ニッポンバラタナゴなど卵黄が小さくヒレなどが出来上がる前に卵黄がかなり小さくなってしまうのです。

カゼトゲタナゴはニッポンバラのより卵が大きいのちゃんと体ができてから浮上します。

浮上までの日数

種類と水温にもよりますが、早くて14日~遅くて25日とかだと思います。水温が高いともちろん早く、今回は25度程度で20日でした。30度だと14日。

気をつけるべきは高温です。30度は孵化まで早いですが、生存率が低くなります。30度以上はやばい。管理しやすいのは25度程度。

カゼトゲタナゴ人工授精成長の様子1日目

受精直後はほぼ丸
3時間もたてば形が変化します。受精が成功したからです。

受精が成功すれば数時間で見る見るうちに形が変化します。これから2・3日もあれば孵化します。この段階でつぶれたり不自然に膨れたりして、明らかに正常でない卵があればスポイドで取り出しましょう。それらは採卵の際につぶれてしまった卵や、未成熟な状態で絞ってしまった卵です。

18個の卵たち

タナゴ人工授精3日後、二回目の水換え

本体が大きくなり尾が動く。活発ではないが、このタイミングで既にピロピロ動く。卵が泳いでるようにしか見えない。

3日目です。水換えは孵化が終了したこのタイミングで行います。タッパーと同じ場所に水を準備しておいて、温度を合わせておきましょう。スポイドで卵膜を取り去ります。膜が引っ掛かって脱げていない個体もいますのが、無理やり吸い取る必要はありません。後日吸い取りましょう。不自然に膨れた卵も取り去りましょう。おそらく、未成熟な親個体を選ぶとここで落ちる稚魚が増えると思われます。

孵化して尾のようなものが生えています。少しタッパーを揺らせば動きます。卵みたいですが、もう孵化した稚魚なんです。卵が泳いでるとしか見えない!尾などが不自然に曲がった個体がいても気にしないでください。そのうちまっすぐなります。

今回はこの時点で18匹から11匹まで落ちてしまいました。というのも、今回初めて水カビ(白い綿のような物)がついてしましました(精子を取るのが十分でなかったのかもしれない)。なので今回、今更ですが水換え時にメチレンブルーを極わずか入れました。指の先につけてチョンとします。受精直後に入れればよかったなぁと後悔(というのも今までいつもメチレンブルーを入れていたので)。湯冷ましを使って水カビを防ぐ方法もあります。

少しでも成功率をあげたいならメチレンブルーか煮沸殺菌の湯冷ましを使うのどちらかはやった方がいいかもしれません。

9日後

9日後です。二日ごとの水換えをして全員元気で11を保持しています。水換えはスポイドを使って水を抜きます。よく見るとゴミが浮いたり沈んでいるので、それを狙って吸い取ります。間違って稚魚を吸わないようにしてください。そしてタッパーと同じ所に置いているペットボトルから水を半分入れています。稚魚の数が少ない場合は、同じタッパーを準備しておいて稚魚の方をスポイドで吸い取って移動させるという方法もあり、これなら全く新しい水に交換できるので水換えを3~4日でもいいでしょう。

9日後となると、刺激を受けると活発に泳ぎ回り、タッパーから飛び出しそうな勢いです。いくつかの個体に目が見えてきました。翼のような突起が出てきます。この突起は二枚貝のえらから吐き出されないようにひっかける突起です。

メチレンブルーは初期に一度だけでok。

11日後のカゼトゲタナゴ達

非常に活発で。光や衝撃の刺激でかなり動きます。

個体数11を維持しています。

14日目

凄い動きます。

2週間となる14日目になると横に寝る形になり、ピロピロ動いています。大きな卵黄が目立ちます。一応、この卵黄が無くなるくらいが浮上の目安です。浮上したら普通の稚魚のように餌を食べます。

この時期になると翼状の突起は見えなくなり、しっぽや目が特に発達します。

カゼトゲ人工授精16日目

相変わらず元気な浮上前のカゼトゲ稚魚。今後は身体がじょじょに黒くなってくる。

水換えは井戸水を使用しています。経験上、特に問題は出ていません。水道水を使う時は、GEXのカルキ抜きを使っています。液状タイプが使いやすいです。

お勧めはメダカはぐくむ水というの。ミネラル配合で生体や水草の調子を維持します。ミナミヌマエビが増えなくなったけど、これを入れたらまた増えるようになったという話を聞いてから使い続けています。

19日目

19日目になると卵黄がだいぶ小さくなっています。ぱっと見は普通の稚魚っぽくなり、浮上できそうな雰囲気です。というか浮上している個体もいる。
今回の水換えは、同じ場所に新しいタッパーを用意して置き水温をおなじにしておいて、そこにスポイドで吸って移動させました。こうすると、容器を変えることでぬめり等の汚れのついていない容器に移し替えることができ、水換えの量も多くなります。より新鮮な水に変えることができました。

ただ、スポイドで移動させるのは大変ですし、スポイド内に稚魚残ってない?と心配事にもなるのでよほど浮遊物等で汚れない限りやる必要はないと感じました。

水面に油膜上の汚れが多いならキッチンペーパーで吸う方が安全だしお手軽です。

次は浮上させます。容器とエアレーションの準備も万端です。

個体数はいつのまにか10になっていました。

浮上の準備

容器をタッパーから稚魚用の水槽へと移動します。早い個体はすでにタッパー内で浮上状態になっているかもしれませんが、タッパーでは今後の管理は無理ですので飼育水槽に移行していきます。

浮上というのはタナゴの人工授精においての関門の一つです。うまく泳げずに、ずっと底を泳ぐばかりで死んでしまう個体もいます。気が抜けません。

なにも気にしなくても勝手に浮上する場合もありますが、エアレーションで少し水流を作ると浮上しやすくなります。水面に顔を出し、空気を浮袋に入れます。最初は斜めに泳いでいますが一日ほどで横にチョンチョンと泳ぐようになります。

この段階での準備としては容器エアレーションです。

※種類によっても違い、エアレーションはバラタナゴは無しの方がいいそうです(アクアライフ情報)。他の種類も無くても浮上する場合もあると思います。今回のカゼトゲは無くても大丈夫そうでした。

容器は10匹程ならプラケースで管理できますが、それ以上なら2リットル以上の水槽が必要です。

エアレーションはフィルター機能も兼ねる投げ込み式がイイでしょう。

餌はブラインシュリンプがベストですが、ちぎった水草等を浮かべてプランクトンを発生させておくとその後もあまり餌について神経質にならず大きくなってくれます。細かくすり潰した市販のエサも食べます。ブランシュリンプは夏場で24時間程度孵化に時間がかかるので準備しておいてください。沸かす手順等は簡単ですが、初めてだと戸惑う場合があるので事前にテストで沸かしておいてくださいね。

21日目に「いざ、浮上!」

お腹が黒緑なのはクロレラを食べたから

いざ浮上!といいつつも、どうやらタッパーの中で浮上状態となり泳ぎまわっていました。

さすがにタッパーでは今後の管理は無理ですから、飼育水槽に移動します。暗い場所で管理している場合は、明るい場所に出る刺激で浮上しやすくなるとも言われています。

むろん水合わせは必要です。

今回はカゼトゲは10匹ですので、とりあえずプラケースを選択しました(あいている水槽が無かったのです)。個体数は10です。卵は18個だったのでどうにか50%以上はクリアできました。最初に水カビが出たのが痛かった。


エアレーションはGEXのロカボーイコンパクトです。外掛けフィルターでも浮上します。その場合は水流は弱くしておいてください。

新たに稚魚用の水槽を買うなら20㎝キューブ程度+外掛けをお勧めします。10匹ならそのまま3cmくらいまで育てられます。我が家では15×15×20の水槽に小型投げ込みフィルターでやりました。

この段階の稚魚は卵黄が後わずかしか残っていないのですが、餌はあまり食べません、感覚的にはよーサック(卵黄)が無くなってから、もしくは浮上の一日後。浮上直後は食べないので、次の日あげましょう。

今回は最初のエサはクロレラ錠剤を食べさせた。

水に溶けたクロレラ錠剤。ここから少量をスポイドで水槽内に入れる。直接錠剤を飼育容器内に入れてもいい(ごく少量で)。

ブラインシュリンプ(エビの赤ちゃん)が定番ですが、日にちが経てば粉末のエサも食べます。メダカのエサを手ですり潰してあげれば、落ちてくるのを少しずつ食べます。水が汚れないように極少量で。

今回カゼトゲタナゴには最初のエサとしてクロレラを給餌しました。錠剤を水でふやかしてスポイドで少し入れます。エアレーションで攪拌されるのでそれを時々食べる感じです。クロレラを溶かした水は冷蔵庫に入れて使えば何度も使えます。錠剤をそのまま入れると量が多すぎます。割って入れても量が多すぎます。

タナゴは草食系なのでクロレラ錠剤も悪くはないと思います。床に沈殿して放置されていますが、床からクロレラを食べる稚魚もいます。しかし、ブラインシュリンプをやり始めるとクロレラは食べません。

最初はおなかが緑になるほど食べていましたが、ブラインの方がお好みではあるのでしょうね。視覚的にも動くから食べたくなるし。

ちなみに成魚のタナゴも多少は錠剤を沈めるてもほとんど興味がなくあまり食べません。ベロっとはがれた珪藻とかの方が何倍も好きみたいです。水槽掃除した時はがれたコケをパクパク食べています。

もし購入する場合はアクアリウム用もありますが、純度100%の人間用でも可能です。稚魚用だから量が多すぎので人間も食べれた方がイイ。

ニッポンバラタナゴの場合はクロレラを使おう(追記:やっぱ無理)

ニッポンバラの場合、浮上する前にヨーサックを使い果たしてしまうケースが多いです。浮上し損ねて底を這う稚魚(通称:スライダー)でも食べられるクロレラはいいかも。沈殿したクロレラを食べて浮上します。ヨーサックが少し残る段階で極わずかにクロレラ粉末をいれてください。お腹が緑になっていれば食べている証拠。浮上したらブラインシュリンプ。
その後失敗続き。グリーンウォーターやらエアレやら試しているけど、斜め泳ぎまではいくものの、水平泳ぎ(浮上)まで行ってくれない。ムズイ!!!クロレラはあんまり関係ないかも・・・
現時点での改善点は、稚魚の成長ムラを考慮して個別に浮上タイミングを見極めて卵黄が無くなったタイミングでどうにかしてクロレラを食べさせる!???

定番はブラインシュリンプ

ブラインを食べるとお腹がピンク色。ちょこちょこ泳ぐ餌を一生懸命食べる。可愛い。

稚魚の定番は孵化したブラインシュリンプ。10匹の稚魚はどれも元気でお腹いっぱい食べてお腹がピンク色。フラフラ水中で動き続けるのでタナゴが見つけやすくて食べやすいようです。食べる様子は観察していても楽しいです。

ブラインシュリンプは夏場なら24時間、気温が落ちると48時間孵化まで時間がかかります。夏場は塩水につけておくだけでいいから楽です。光で集めてメッシュカップですくい、水で塩水を落とし投入します。

ブラインは半日程度なら生きたまま泳いで餌になります。一日二回で十分でしょう。大量にあげても水を汚すことにつながるので注意してください。それに食べ過ぎて泳げなくなり死ぬタナゴ稚魚も時々います。ブラインシュリンプのやりすぎに注意!浮上してから14日後くらいの間が食べすぎて死んでしまう個体がいます。

粉末のエサも小さくすり潰せば食べます。もしくはメダカ稚魚用の餌。自分の場合、稚魚を外で管理すならブラインは一切使わず粉末だけで育てていますが、問題なく育ちます。野外では勝手に湧くプランクトン類を食べているんでしょう。

浮上後の管理

浮上したらひと段落!と油断してはいけません。うまく餌を食べて環境に慣れないと死ぬ場合があります。大事なのは稚魚のサイズを同じにすることです。2週間前に生まれた少し大きい稚魚などど一緒にすると小さいのがなかなか育ちません。それどころか次々に死んだりします。タナゴは同時期に生まれた稚魚(種類は問わない)と群れになって団体行動をしますが、同じ発育段階のグループのみで飼育した方がトラブルが起きないようです。

浮上後の管理は稚魚の数によって変わりますが、5匹くらいなら1Lほどのプラケース的なものなら何でもいいです。適度に光が当たる環境で水草を浮かべたりしているとインフゾリア(ゾウリムシ)が発生して勝手に食べるので、餌やりが雑でもokになります。我が家ではウィローモスを入れています。20匹以上なら水量は3リットル以上にしてください。数が多い場合は何かしらのフィルターを使うか、水量を大きくしてください。

屋外ならバケツなどに入れ日陰において適当に粉末餌をあげれば大きくなります。メダカのエサをつぶしてあげれば浮上数日で食べます。エアレーションすると適度な水流になり健全に育ちますし、水槽の状態も健全になるのでした方がいいです。大きくなり始めれば稚魚としては丈夫な魚なので高水温と酸素さえ気をつければ大丈夫と思います。

個人的には屋外日陰管理の方が簡単です。ただ、メダカのように高温には強くないので注意してください。水換えは週に一回すると安心です。グリーンウォーターでも餌をやれば育てられますが、あまり濃い緑になると酸欠等が考えるので注意してださい。

これはニッポンバラタナゴ。人工授精は浮上率が低く難易度が高い。何かしらの工夫が必要っぽい。

カゼトゲは順調に成長中

37日目のカゼトゲタナゴ達

まだまだ弱々しくチョンチョンと泳いでいます。個体差で小さい個体なども現れますが、餌を食べていないようなら違う餌などいくつか試したらいいでしょう。

エアレーションやフィルターは必須ではありませんが、あった方が安心です。

屋外飼育の場合は、濃いグリーンウォーター化すると水温が上がったタイミングでタナゴ稚魚は次々死んで死んでしまうので、メダカのように放置グリーンウォーターはお勧めしません。
うまくやれば楽なんだけど。

90日後のカゼトゲタナゴ

2.5㎝程になりました。餌はメダカ繁殖のエサもしくは、テトラのリバーミンを与えています。鱗の光る個体も生まれました。そろそろ大きい水槽に移そうと思っています。
ウィローモスを入れておくと余分な養分を吸ってくれてコケが生えにくいです。食べ残し回収班としてサカマキガイも入れています。食べ残し要因を買うならレッドラムズホーンかな。嫌われ者のスネール類もうまく使えば頼りになりますよ。

  • 水槽 15-15-20㎝ コトブキレグラス
  • フィルター GEXロカボーイコンパクト
  • 水草 ウイローモス

タナゴの種類により難易度が違う

春産卵型のタナゴは二枚貝で増やすより、人工授精で増やす方がやりやすいというのが一般的な認識です。ただやはりタナゴによって難易度が違います。種類のよりメスの産卵管がなかなか伸びなかったり、浮上率が低かったり等の違いがあるのです。

今回のカゼトゲは卵が大きく、あっけないほど簡単に浮上まで行きました。季節も6月で気温もちょうどよかったのでしょう。ですが、カゼトゲは小さくて採卵数が少なくて5個取れればいい方です。採卵のタイミングも難しく、絞ろうとしても全然でないタイミングもありりました。同一個体からは人工授精は1回か2回しか卵は採れず、合わせて10個くらい。浮上は簡単ですが、数が少ない。

一方、大型のタナゴのタビラ類は一度に100個以上取れる場合もあり、爆殖も狙えます。浮上も特に難しいことなくできるそうです。人工繁殖に適したタナゴといえるでしょう。タイリクバラもサイクルが早く採卵しやすい。

一方、ニッポンバラタナゴは卵は採れるのですが、浮上までが難しい。体が出来上がる前に卵黄が尽きるのです。どうにか栄養を取らせる工夫が必要です。もしくは大きなメスから大きな卵を取るとか。

ヤリタナゴは飼育環境では産卵管が全然伸びずにタイミングが難しいです。はち切れるほどお腹の大きいメスのヤリタナゴはよく釣れるので、そういう個体を使うのもいいでしょう。採卵できれば浮上までは楽らしいです。

人工授精が比較的簡単とされるタナゴーーータビラ類、アブラボテ、カゼトゲタナゴ

普通ーーータイリクバラタナゴ、その他

人工授精飼育が比較的難しいとされるタナゴーーーニッポンバラタナゴ、イチモンジタナゴ(検証中)、秋冬型のイタセンパラ、ゼニタナゴ、カネヒラ

途中で死んだり上手く浮上できない理由と対処法

人工授精のニッポンバラタナゴ

メスの卵が上手く絞れない原因のほとんどは状態が発情不足だからです。時期が早すぎたり、飼育水槽が過密すぎたりなどの原因が考えられます。

受精後は浮上までには数匹死んだり、半分死んだり、全部死んだりする場合があります。

死ぬタイミングが多いのは1-3日までの孵化期間と、5日までの発眼期間です。悪い時には生存率20%くらいとなります。その大きな理由は、未成熟な卵と精子です。普通は一日に2-3個しか卵を産まないのに、無理やり時には10個以上採卵するので卵は未成熟なまま絞ってしまいます。あまり欲張らず、タナゴのサイズやお腹の膨らみ具合を見て絞りましょう。焦らずともまた絞れるはずです。婚姻色が出てきたからといって、早めの3月4月に採卵したりすると未成熟が多かったりします。


浮上前に死んでしまう理由は想像するしかありませんが、未成熟な卵と精子以外の理由の一つとしては水の管理の失敗でしょう。通常二枚貝の中では、常に二枚貝の中で貝が濾したある程度新鮮で生体に適した水の中で成長します。しかし容器の中だと水流はありませんし、一度汚れた水は汚れっぱなし。なので、老廃物などはなるべく取り除いてきれいな水を保つべきです。容器の大きさとタナゴの数の関係もあります。浮上が近づくほどろうっ廃物も多くなることを考えれば、小さい容器で多くの浮上前のタナゴを管理すると最初は良くても途中や後で失敗につながります。水温をしっかり合わせて頻繁に水かえをしましょう。

容器の大きさにもよりますが、なるべく余裕がある方がいい。水換えは1~3に日一度。毎日水換えが最も安心です。水温は完璧に合わせてやりましょう(水温が同じなら全量水換えでもいい)。タナゴ多めで水がすくなめはやめましょう。よく動いて元気だからと水換えをさぼると浮上しなかったり、奇形で元気がなかったりする個体が出がちです。

受精直後に水カビで卵が腐るのは煮沸消毒した水や精子を良く取り除いて対処します。受精させたら3回くらい水を入れ替えて完全に排除すべきです。メチレンブルーがあるなら入れてもいいと思いますが、入れるのは一番最初の卵の時と最初の水換えの時だけで発眼後は新鮮な水で育てましょう。

卵はなるべく大きい方が成功率が上がるので、大きなメスの方を使用した方が有利になります。メス選びも大事ですし、産卵期は餌を多めにして大きな卵を持たせましょう。そして、卵黄節約のためになるべく静かな環境で卵を管理した方がいいです。光や音?振動で動かないようにした方がイイ。ただ、卵黄のサイズのシビアさは種類によりことが大きいので、そこまで気にしなくても沢山浮上させられる場合もあります。

浮上前になると斜めになって水面近くまで上がってきて、水面をつついて浮袋に空気を入れてやっと完全浮上します。水面に油膜があると突き破れないのでキッチンペーパーなどで吸い取りましょう。なるべく元気な状態でそこまで到達できれば浮上するはずです。ちなみに、バラタナゴ類はエアレーションなしの方が浮上しやすいとアクアライフ202008に書かれています。

人工授精は奇形が多い?人工授精だともう貝には生まない?

人工授精は奇形が多いとの声もあります。しかしこれは正しくありません。採卵数と孵化率が高いからこそ、奇形のタナゴも育つ可能性があるのです。貝を使った場合に吐き出されたりして淘汰されるはずのタナゴも人工授精だと救える可能性があります。確かに体が弱そうなタナゴも生まれます。しかし、そのようなタナゴもケアして一年くらいきちんと育てれば問題なく大きくなります。

人工授精で生まれたタナゴは貝に卵を産まないという説もあります。信憑性は不明ですが、貝はおそらく匂いを頼りに探しているはずですので、稚魚時代にその貝の匂いを経験してない場合は産まない可能性もあります。タナゴの種類や地域により好む貝が違うということはタナゴではすでに判明している事実ですが、これは確かに稚魚時代に匂いが関係している可能性は確かにあるでしょう。

季節の問題

3月4月は気温が低い日もあり、ヒーターの湯煎式が安心でしょう。

親の飼育水槽を加温しておくと、冬でも繁殖させることもできます。ただ、タナゴの気分の問題があるのでタイミング等はむずかしいかもしれません。

お買い物

まとめ

このタナゴは全部家で生まれたタナゴ。ちっちゃいタナゴも可愛い!!無事大きくなれ!60規格水槽2個と小型水槽4個でニチバラとカゼトゲを中心に飼育しています。

今回はカゼトゲタナゴを例に浮上までの様子を記事にしました。採卵自体はやってみたらとても簡単です。

あとはちゃんと管理して浮上させてあげましょう。近所で釣ったカゼトゲが無事増えてくれたら嬉しいです。

ニチバラは貝ではうまくいっているのですが、人工授精は難しい。今後も挑戦して何か情報あれば追記します。2021年はニチバラの成功率は10%ほどでしたトホホ。。。

参考サイト等

2020年アクアライフ8月号は川魚特集で、タナゴの人工授精の方法が2ページ書かれています。手元で読みながらやると参考になるし、川魚カタログにタナゴも載っているので購入お勧めします。

人工授精のページはアクアゴリラという方が書かれており、その人のHPにもやり方が公開されています。ぜひ参考にしましょう。

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