新たに淡水関連で三種が希少種に指定される見込み
環境省は11月6日、ヨナグニキノボリトカゲ、ゼニタナゴ、ヤンバルオオイチモンジシマゲンゴロウなど10種を国内希少野生動植物種に指定する予定だと表明しました。
今後パブリックコメントを受け付けた後に指定する見込みのようです。国内希少種に指定されれば、捕獲や譲渡、販売が禁止されていきます。パブリックコメントは12月14日まで。
※自分が送った内容は一番最後に記載しています。
https://www.env.go.jp/content/000269729.pdf
https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/detail?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=195240084&Mode=0
淡水魚関連ではゼニタナゴ・シナイモツゴ・カタハガイが対象となっています。
XなどのSNSでは「反対する人」「ビックリする人」「仕方ないと思う人」等の意見が散見されました。
皆に共通するの何か釈然としない思いがあるということです。その理由は・・・・淡水魚が減る理由って公共工事の場合が90%以上(個人的な感覚)なんですよね。
採取圧や販売目的の採取や外来種も理由の一つではありますが、フィールドを観察してる人たちからすれば水路改修でその地域からどんどん減っているのは明白な事だと思います。
なので、希少種に指定はしても保護対策は取られるわけではないといいうことに釈然としないのです。例えば、この水路にはカタハガイが生育しているから水路は改修しないでと役場や国に伝えてもだからどうした案件です。貴重な貝がいたとしても、今年はこの古い水路を近代的な水路にするという予定は絶対に考慮されることはありません。タチが悪いのは水害を防ぐために水路改修したのに、以前より浅く細くなってより水害に弱い水路に工事されたりする場合も多いことです。要するに単に工事でコンクリート水路にできればokってやつ。
なので採取販売規制がかかってとしても、法律で増やそうとしている訳ではない、その矛盾に釈然としないのです。
希少種に指定されたら採取販売禁止だけではなく、希少種の生育が確認される場合は最大限保護する義務を自治体が負う等の目標があれば納得もできますが、そういった指定種の保護に関する事は全く触れられていないのです。減少理由に「ため池の改修・管理不足による生息地の消失」と記載していても、生育地を守るとか増やす観点は全くありません。
なぜ、ゼニタナゴ・シナイモツゴ・カタハガイが指定されたのか?
なぜ、ゼニタナゴ・シナイモツゴ・カタハガイが指定されたのか?その理由は明白です。
以下の環境省の目的があるからです。
○ 平成 29(2017)年の種の保存法の法改正の際の附帯決議として、「国内希少 野生動植物種の指定は、科学的知見を最大限に尊重して実施することとし、 当面、2030 年度までに 700 種を指定することを目指し、候補種の選定に ついて検討すること。」が求められている。
https://www.env.go.jp/content/900488918.pdf
毎年、30種を希少種に指定する目標があります。なので、淡水魚関連で次々と希少種指定が進んでいくことは確定事項なのです。
常識的に考えれば、在来生物を保護して希少種を減らすことが目標になるはずですが、環境省は逆に希少種を増やす目標を立てています。
もちろん、繰り返しになりますが希少種に指定されたらその生物を増やすために何か行動を起こす口実となるなら文句はありません。例えばゼニタナゴが生育する地域の水路を今後改修する際は小魚が生育しやすいように川幅を多くとりエコトーンを確保し、季節で水量が変化しすぎて干上がることが無いように自治体に義務を負わせる等です。
このような保護政策は全く無視して単に希少種700種に向けて指定しているだけ。なぜ、ゼニタナゴ・シナイモツゴ・カタハガイが指定されたかの理由は700種の目標に向けて局所的に生き残っている種類をまず指定したってことでしょう。
おそらく数年後には九州ではカゼトゲタナゴ・ニッポンバラタナゴあたりが指定されている可能性はとても高いです。他にはアリアケシマドジョウとか、オンガシマドジョウ、アカザ、イシドジョウとか。二枚貝も多く指定されるでしょう。
んでんで、カタハガイはとってもマイナーな種類ですね。マツカサガイ・ニセマツカサ・カタハガイ等の見分けは難しいです。よほどのガサガサガチ勢じゃないと見分けは付きません。
自分がもしカタハガイを獲ってもマツカサガイと思うでしょう。これだけ指定する意味は???とも思ってしまいます。だってほとんどの人は現実て問題として見分けつかないから。いっそイシガイやドブガイ全部指定したらと思っちゃいますが。うーむ。
何が正解なのかわかりませんが、とにかく淡水の二枚貝は全部希少なので今後は少しでも減らないように保護すべき状況であることは間違いありません。
セボシタビラはどうなった?
我が家は福岡県南部でセボシタビラの生育地域でした。セボシタビラが希少種に指定されたのは2020年2月です。指定直前に採取圧で減ったとか、指定後に愛好者がこっそりセボシを捕りまくったなんてことはほぼないと感じています。周辺じゃタナゴはマイナー中のマイナーでタナゴ釣りの人はめったに観ませんし、セボシがいるとはいっもあの広大な水路群でセボシを採取することなんて気が遠くなります。採取圧で減るとか考えられません。ではなぜ減ったかと言えば、指定後に急速に筑後地域の水路改修が進んでほぼ絶滅状態となりました。
急速に水路改修が進んだ理由は九州北部豪雨などの水害です。福岡県では大雨が福数年続いたので河川予算が潤沢になって古い水路が重点的にコンクリート化されてしまいました。特に柳川の周辺地域にあった年代が古いクリークは全面的に改修が進み、クワガタが取れるような柳の木があったクリークはほとんどなくなってしまいました。周辺クリークは外来種が大量とはいえ、県内では珍しい淡水魚がかろうじて残る地域で指定直後のセボシタビラも確実にいたのですが、当然ながら水路改修では全く考慮されませんでした。
自分はこの件に関して福岡県自然環境課野生生物係に電話したのですが、ほぼ話が通じず「キョトン」とされて終わりでした。環境省の特定第2種国内希少野生動植物種といっても野生生物課の人すらそれって魚の名前?レベルだったのです。
セボシタビラと同時にカワバタモロコも販売禁止となりました。法律施行直前に大牟田のニッタンという淡水魚販売店に行ったらカワバタモロコは売れ残ってました。店主さんはあと数日で売れなくなるから、残ったのは店で飼い続けると話していました。指定直前にカワバタモロコが買えなくなるから今のうちに買え!みたいなことは起こっていなかったのです。採取禁止や販売禁止も確かに魚を増やすことにつながるかもしれまんが、最も大事なのは水路をこれ以上悪化させないことと、魚の為に水路を干上がらせないために通年通水を行うことです。
※セボシタビラは今も福岡には少し残っています。カワバタモロコも残っていますが、とても局所的。カタハガイもごくわずか。
販売禁止について
希少種に指定されると販売も禁止になります。ワイルド個体なら販売禁止にするのは妥当だし、そうして欲しい。でもブリード個体は流通させればいいのにと思う。
禁止にする理由が特に思い浮かばない。ブリードが自然に放流されることを懸念したとしても、現状ではそういう魚はたくさん売られている訳でして・・・。例えば店で売られていたアブラボテというタナゴですが、どんな魚もどこかに放流されれば遺伝子汚染をしてしまうわけです。
そもそも生育環境が壊滅的なわけだから・・・問題を起こすほど増えることはほぼあり得ないと思う。
川を守ろう
↑工事される前
丸石水路も今は三面コンクリート。丸石水路って昔の人が大変なコストをかけて作っていたはずで、今の新しい水路より何倍も高級な水路だと思う。新しい水路だからって水害に強いわけでもないし。
セボシタビラ、ニッポンバラタナゴ、カゼトゲタナゴ、アブラボテ、ヤリタナゴ、カネヒラな福岡県内6種がいたであろう水路も今はない。動画にはタナゴはアブラボテのみ登場。
水害対策のため近所のタナゴ楽園水路は消えてしまい。タナゴ釣りする場所もなくなりました。工事はその区間だけでなく、長期間水を止めるのでタナゴや二枚貝が全滅します。わずかに残っていた自然度の高い古い水路はリストアップされ毎年どんどん改修されています。以前は、古くて草刈り面倒だけど工事するほどでもないような水路工事に潤沢に予算が付くようになったことで、とにかく片っ端から工事されています。
国内希少種に指定するなら保護政策も同時に行って欲しい
国内希少種に指定するなら保護政策も同時に行って欲しい。指定するだけでは、益々その地域から忘れられていずれ絶滅します。
- 古い水路でも致命的な問題がないなら工事はだめ
- 希少な水生生物がいる水路群は工事で一斉に水を抜かない
- 希少な生物がいないか工事計画の前に調査する。告知してヒアリングも行う。
- 一律に工事するのではなく一部改修などで対応
- どうしても工事する際は最小限の区間に留める。工事の最中も影響が最小限になるように配慮する。
- 農閑期でも少量の水を流す
- 川底を掘る場合は全部掘らない
- 希少種が生き残っている地域での啓蒙活動
パブリックコメント受付について
12月6日から13日までの7日間のみの受付。なぜにこんなに受付期間が短いの??(希少種指定は緊急性が高いから募集期間が短いんだそうだ。)先ほど以下の内容でパブリックコメントを送りました。匿名でも送れます。
環境省へのパブリックコメント案
環境省がゼニタナゴ、シナイモツゴ、カタハガイを国内希少野生動植物種に指定する方針を示したことについて、以下の意見を述べます。私の住む地域にはカタハガイが生息していますが、その数は非常に少なく、ほぼ絶滅といっても過言ではない状況です。この現状を踏まえ、単に採取や販売を禁止するだけでなく、生息環境を保全し、種の増加を目指す具体的な施策が必要と考えます。
まず、希少種の指定には種の存続を図る目的がありますが、指定のみでは効果が限定的です。特に水路改修工事がもたらす生息地の破壊は、これらの種にとって最大の脅威です。福岡県南部では、セボシタビラが2020年に希少種に指定されましたが、指定後も生息地の水路が改修され、多くの個体が生息環境を失い、激減しました。カタハガイも同様の運命を辿る可能性があり、このままでは希少種の指定が絶滅を早めることになりかねません。
提案する具体的な施策
以下に、カタハガイを含む希少種の保全と増加を目指す具体的な施策を提案します。
- 水路改修工事の見直し
希少種の生息地で行われる水路改修工事は、彼らの生息環境に壊滅的な影響を与えます。工事の設計段階で希少種の生息が確認されている場合、以下の対応を検討すべきです。
工法の見直し:底質を破壊しない工法の採用や、生息地を避ける工事計画の立案。
環境への影響評価の徹底:事前に影響を十分に評価し、必要であれば工事の延期や中止を決定する。
- 調査および保護エリアの設定
希少種の生息状況を詳細に調査し、重要な生息地を保護エリアとして指定することが必要です。これにより、生息環境の維持・改善が可能となります。また、保護エリア内では適切な管理が行われるよう、地元自治体や専門機関が連携する仕組みを構築すべきです。 - 地域住民への啓発と協力
希少種の指定により、地域住民の関心が薄れ、保全活動が停滞する懸念があります。そのため、以下の取り組みを提案します。
環境教育の充実:学校や地域イベントを通じて、希少種の重要性や保護活動の意義を広める。
保全活動への住民参加:地域の人々が協力しやすい環境保全プログラムを提供する。
- 二枚貝を増やすための施策
カタハガイのような二枚貝の保全と個体数増加のためには、次のような施策が効果的です。
人工繁殖の促進:水産研究所や大学との連携を通じて、カタハガイの人工繁殖を試みる。幼生を適切な生息地に放流することで個体数の回復を図る。
魚類との共生環境の整備:カタハガイは特定の魚類との共生関係が知られています。この魚類の個体数を維持し、生息環境を整えることが必要です。
底質環境の改善:二枚貝は特定の底質を好むため、生息地の土壌や水質を適切に管理する。
希少種指定の意義を超えて
希少種の指定は、種の存続のための重要な一歩ですが、それだけで十分ではありません。実際の保全は、環境を守り、地域住民と連携した取り組みが不可欠です。
カタハガイが再び地域で繁殖し、自然の一部として豊かに生息できる環境を取り戻すために、これらの提案を実行に移すことを強く要望いたします。