エラ呼吸ってどういう理屈で酸素を取り込んでいるんだろうか?というか、人間だってどういう理屈で酸素を取り込んでいるか理解して実感しているか微妙。自然すぎてもはや理解不可能。
以下調べてみました。
まずエラって?
エラは呼吸するための魚の器官です。エラの体表側には板状の骨で出来たエラブタがあります。胸鰭の方に鰓孔がありここを開け閉めすることで口から水を飲みこんでエラに通します。
エラは体の両側にあるので魚の口よりも大きく水を吸いこむ力があります。つまり、口を開けて水を吸いこむというより、エラブタを開け閉めしてその力で水を吸いこんでいると言えます。
その吸い込んだ水をエラに通すことで水中に含まれる酸素を鰓弁(サイベン)という部分で取り込んで呼吸をすることがします。
- エラ(鰓)–魚の呼吸する部分の全体の名称
- エラブタ(鰓蓋)–エラの体表部分、鱗などもある
- エラアナ(鰓孔)–体の後ろ側方向に水を抜く孔
- サイハ(鰓耙)-プランクトンなどの餌を濾し取る
- サイキュウ(鰓弓)–えらを支える部分
- サイベン(鰓弁)–水中の酸素を取り込む
エラ呼吸の理屈
なぜ魚は水中で呼吸ができるのか?
簡単に説明すればエラに水を通して水中の酸素を血液の中に取り込んでいるからです。
しかしながら、具体的にはどのような作用で酸素を血中に取り込んでいるんのでしょうか?
エラはガス交換と言われる方法で酸素を取り込んでいます。その方法は人間の肺とほとんど同じやり方です。しかし、水中に溶け込む酸素の量は空気中の1/30と少ないので、エラは細かいひだを多くして表面積を増やしてようやく必要な酸素を血中に取り込んでいます。
んで、ガス交換ってどうやるの?
ガス交換とは具体的に酸素と二酸化炭素を交換しています。水中の酸素と体内の二酸化炭素を交換しているのです。その理屈は簡単で、濃度の濃いものは薄いものと混ざって薄まろうとするごく単純な原理を利用しています。これは拡散(diffusion)と浸透(osmosis)という物理学的な原理に基づいています。例えば塩水と真水を混ぜると塩分濃度がさがるでしょ。ごく単純です。
空中でも水中でも酸素よりも二酸化炭素の方が圧倒的に量が多いので混ぜようと勝手に酸素が血中に取り込まれて二酸化炭素が抜けていくんです。
エラは毛細血管が張り巡らされており、その立体的な構造により多くの表面積を稼いでいます。エラは非常に薄い膜で血と水が隣り合った瞬間に濃度の差を利用して酸素を取り込むのです。
水中の酸素を増やす方法
水中の酸素は温度により違います。
水温が高いほど酸素量が減ります。というか温度が高いほど酸素が抜けていくので水中の酸素が減るのです。
それを防ぐにはエアレーションをするのが一番。酸素が少ない床の水を水面まで運んで酸素を取り込みます。
フィルターで水面を動かすのも効果的。下の方から吸い込んだ水を上に吐き出すとその時に酸素を取り込みます。なるべく水面が動いた方が魚もバクテリアも健全になり、調子が良くなります。
他にもあるエラの機能
エラの機能は酸素を取り込むだけではありません。
アンモニアを排出する機能もあります。魚は餌などから取り込んだ窒素成分を排出必要がありますが、水と反応させて窒素を排出します(いわゆる代謝)。その際に化学変化が起きてアンモニアとなります。アンモニアは水中のphに応じて非イオンとアンモニウムイオンに別れます。
アンモニウムイオンは魚に取ってほぼ無害ですが、非イオン型アンモニアは血中酸素の濃度を下げてしまうので、魚の酸欠になってしまう場合があります。
他の機能としては水中の塩分と体の塩分の浸透圧を合わせる機能があります。淡水魚は塩分を体に取り込み、海水魚は排出します(尿からも排出)。
餌を濾し取る機能もある。エラには鰓耙(サイハ)という櫛のような部分があります。この部分はエラに水を通すときにエサを濾し取って食べることが可能です。魚により鰓耙(サイハ)の形が違いますが、砂ごと餌を食べて砂を出すような魚ほど大きく隙間があります。
エラの呼吸以外の機能
- アンモニアの排出
- 塩分濃度の調整
- 餌を濾し取る
エラの大きさでわかる?魚の生息域
あくまで大雑把な括りですが、エラが小さいほど水流がある水域を好みます。水流があるほど酸素の量が多いのでエラが小さいのです。渓流魚はエラが小さめ。
一方、ため池などに適した魚はエラが大きめです。ブラックバスなんかは顔もエラも大きいです。
エラの欠点
高機能なエラですが欠点もあります。あまりにも薄い膜で水と接しているので、水温やPH・塩分の影響を受けやすくなってしまうのです。
水温の影響もエラのせいですぐさま受けてしまいます。魚は変温動物なのですぐに体温も変化して、それが急激な場合は調子を崩すのです。
エラの病気
エラの病気はエラ病と称されますが、外から見えにくいこともあって飼育者にとっては謎の死因となっています。
突然死やポツポツ死の原因の一つになっているのは間違ありません。エラ病と言うとはどのような症状かというと、エラの細胞が壊死して呼吸困難となる病気です。原因はさまざまですが、そのほとんどは細菌によるものです。そのため細菌性エラ病ともいわれます。
原因となる菌で多いのはエロモナス菌です。水槽内では一般的な菌で尾ぐされや赤斑などの原因となっています。簡単に言えば腐った水に増える菌でが、金の大発生とは別に老衰や衰弱で免疫が低下して発症したりします。
治療するにはフラン系やオキソリン酸を使います。代表的な所ではエルバージュエースや観パラDです。
エラに頼らない魚もいる
ほとんどの魚はエラのみで呼吸しますが、一部の魚はそれ以外の呼吸法を持っています。以下は一例です。ドジョウは腸呼吸をしているともいわれていましたが、実際は腸の掃除をしているという説もあります。
- 皮膚呼吸 ウナギ ウツボ トビハゼ ムツゴロウ
- 肺呼吸 肺魚
- ラビリンス器官 ベタ キノボリウオ
温度と水中の酸素の量
水に溶け込む酸素の量は溶存酸素量といいます。限界の酸素量は飽和溶存酸素量といいます。飽和溶存酸素量は水温が高いと低くなり、低いと高くなります。つまり、夏場ほど酸欠になりやすいのです。
水温と飽和溶存酸素量
- 0℃ 14.5mg/l
- 5℃ 12.37
- 10℃ 10.92
- 15℃ 9.76
- 20℃ 8.84
- 25℃ 8.11
- 30℃ 7.53
まとめ
魚のエラの機能について記載してみました。
考えてみれば人間も空気と血管を薄い膜で近づけてガス交換をして呼吸しています。
魚もほぼ同じ。
呼吸って、地球の生き物の共通の動作です。呼吸って素晴らしい。人間も魚も微生物もみんな呼吸しています。
参考文献
など。